季節性インフルエンザ
季節性インフルエンザとは、インフルエンザによる感染症で主に寒い時期に流行します。インフルエンザは感染力が高く毎年多くの方が感染しています。
インフルエンザは大きく分けてA型、B型、C型があります。A型は多くの型が存在します。広く流行するのはA型とB型です。
インフルエンザC型はA型やB型に比べて症状が軽く重症価することは少ないようです。ワクチンや有効な治療法はありません。
症状
インフルエンザには主に以下のような症状があります。
- 急な高熱(38度以上)
- 悪寒
- 頭痛
- 筋肉痛、関節痛
- 喉の痛み
- 倦怠感
- 咳、鼻水
合併症
インフルエンザに感染した患者さんの多くは数日〜1週間程度で改善していきますが、高齢者、幼児、妊婦、基礎疾患があるかたは重症化するリスクがあります。
重症化すると、肺炎、気管支炎、中耳炎、脳炎などの合併症を引き起こします。
また、もともと持っていた基礎疾患が悪化することもあります。
治療
インフルエンザに感染した場合、抗インフルエンザ薬を早期に服用することで症状の重症化を防ぐことができます。また、体がウイルスと戦えるように、十分な休養と水分補給も必要です。
インフルエンザ治療薬(内服または吸入)
投与方法 | 投与回数 | 注意事項 | |
---|---|---|---|
タミフル | 内服 | 1日2回、5日間 | |
ゾフルーザ | 1回 | ||
イナビル | 吸入 | 1回 | 肺炎や気管支喘息合併では使用すべきではない |
リレンザ | 1日2回、5日間 |
他に点滴で投与するインフルエンザ治療薬(ラピアクタ)があります。
インフルエンザのワクチン
インフルエンザに対しては以前からワクチンが使用されています。主に使用されているワクチンは次の2種類です。
- 不活化ワクチン:不活化したウイルスを使用したワクチンで、注射で投与されます。一般的に使用されているインフルエンザワクチンです。安全性が高い。
- 弱毒化生ワクチン:毒性を抑えたウイルスを用いた生ワクチンです。鼻腔内に噴霧されます。自然感染に近いため、免疫が持続することが特徴です。
日本では2024年度から2歳〜18歳の方が接種対象になっています。詳細はこちら。
ほとんどの方が不活化ワクチンを使用されているので、インフルエンザに対する不活化ワクチンについて説明します。生ワクチンについてはこちらでご確認ください。
インフルエンザには多くの型が存在しますが、毎年作成されるワクチンは4価ワクチンが標準的に使用されています。
ワクチンの製造過程で鶏卵を使用する製法が主に行われていますが、最近では他の方法での製造も行われるようになってきています。
ワクチンの有効性
感染予防として
インフルエンザウイルスは多くの型がありますが、ワクチンに含まれる型の種類は限られています。流行を先取りして想定された型に対してワクチンが作成されます。
インフルエンザウイルスは変異するため、ワクチンでカバーする型と流行しているウイルスの型が一致しているかどうかで有効性が変動します。
型が一致している場合は、高い予防効果が見込めますが、違う場合は効果が低下します。つまり、インフルエンザワクチンはインフルエンザウイルスの感染を完全に防ぐことは難しいと言えます。
感染予防以外の効果
インフルエンザワクチンには感染を予防する以外に以下のような効果があります。
- 重症化の予防:ワクチンを接種することでインフルエンザの症状が軽く済むことがあります。高齢者や基礎疾患がある場合は、重症化の予防が重要です。
- 合併症の予防:ワクチンを接種することで、肺炎や気管支炎などの合併症を予防する効果が期待されます。
接種対象
一部の方は、インフルエンザワクチン接種費用の一部に公費負担があります(定期接種)。
- 65歳以上の方
- 60~64歳で、心臓や腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される方、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方
64歳未満で上記に該当しない方は任意接種になります。
任意接種と定期接種
- 任意接種:接種費用は自己負担(自治体によって助成がある場合も)。
- 定期接種:法律に定められた期間で接種した場合は公費負担で無料。
ワクチン接種
タイミング
季節性のインフルエンザワクチンに対する接種タイミングは、流行する前が良いでしょう。ワクチン接種から免疫ができるまで2週間程度かかるとされています。
季節性のインフルエンザは通常12月くらいから流行入りすることが多いので、10月から11月くらいにワクチン接種することが勧められます。
一度のワクチン接種で5ヶ月くらい効果があるとされています。接種から2週間後くらいに効果が高まり、その後は徐々に低下していきます。そのため、毎年の摂取が勧められます。
摂取回数
大人:13歳以上であれば1シーズンに1回の接種が推奨されています。
こども:生後6ヶ月〜12歳までの小児や初めてインフルエンザワクチンを摂取するこどもは2回の摂取が推奨されています。2回目は2〜4週間あけて接種されます。
接種方法
インフルエンザワクチンは皮下注射で接種されます。
副反応
インフルエンザワクチン接種後の、主な副反応は倦怠感や微熱などの全身症状や注射部位が赤くなったり腫れたりする局所症状がありますが2〜3日で改善します。
まれにアナフィラキシー症状があらわれることがあるため、接種後は30分程度は様子を見ましょう。極めてまれですが、ギランバレー症候群(自己免疫による神経への攻撃)が発生することが報告されています。発生は10万人に1,2人程度のようです。
注意事項
インフルエンザワクチンは精製される過程の中で鶏卵が使用されるため、鶏卵、鶏肉や鶏由来のものに対してアレルギーがある方は接種を控えましょう。
インフルエンザワクチンは完全に感染を抑えるわけではありません。流行シーズンになったらワクチン以外に以下のような方法で感染予防をしましょう。
- 手洗い・うがい:頻繁に手を洗い、外出後はうがいをする
- マスク着用:咳やくしゃみをする際にはマスクを着用し、感染を広げないようにする
- 適切な換気:人が多く集まる場所では、定期的に換気を行う
弱毒化生ワクチン(2〜18歳対象)
2024年度から使用できるようになったインフルエンザワクチンです。その名の通り毒性を抑えたインフルエンザが使用されます。
鼻腔内に噴霧するため注射による痛みはありません。擬似的にインフルエンザに感染させ抗体を作らせます。自然感染に近く、予防効果は不活化ワクチンよりも長いと言われています。
接種対象
インフルエンザに対する弱毒化生ワクチンの対象は以下のようになります。任意接種です。
- 2歳以上で19歳未満の方
任意接種と定期接種
- 任意接種:接種費用は自己負担(自治体によって助成がある場合も)。
- 定期接種:法律に定められた期間で接種した場合は公費負担で無料。
副反応
弱毒化生ワクチン接種後の主な副反応は、鼻水や鼻づまりなどが見られます。喉の痛みや咳といったかぜ症候群のような症状がでることもあります。
極めてまれですが、アナフィラキシー症状やギランバレー症候群といった強い副反応の可能性もあります。
注意事項
弱毒化していも生ワクチンです。周囲の人に感染する可能性がごくわずかにあります。そのため、周囲に免疫が低下している方は妊娠している方がいる場合は不活化ワクチンの接種を検討しましょう。
また、吸入後に喘鳴がでることがあるため気管支喘息の方は注意が必要です。
インフルエンザワクチンは完全に感染を抑えるわけではありません。流行シーズンになったらワクチン以外に以下のような方法で感染予防をしましょう。
- 手洗い・うがい:頻繁に手を洗い、外出後はうがいをする
- マスク着用:咳やくしゃみをする際にはマスクを着用し、感染を広げないようにする
- 適切な換気:人が多く集まる場所では、定期的に換気を行う