拡張型心筋症とは-1:症状・原因

このページは、日本循環器学会 / 日本心不全学会合同ガイドライン「心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」を参考に作成しております。

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拡張型心筋症とは

拡張性心筋症(Dilated cardiomyopathy; HCM)は、心筋が薄くなり、心室が拡張し、収縮力が落ちる病気です。心臓のポンプとしての機能が落ちます。

拡張型心筋症の定義

拡張型心筋症は、『左室のびまん性収縮障害左室拡大を特徴とする疾患群』と定義されています。

特に原因が明らかな「二次性心筋症」を除外する必要があります。頻度としては、人口1000人あたり1〜3人程度であると推定されています。

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左心室のびまん性収縮障害と左室拡大の確認

心エコーにより『左室拡大と左室の収縮機能低下』を認めたら、拡張型心筋症および二次性心筋症を疑います。

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二次性心筋症を疑う所見があるか

拡張型心筋症は、なんらかの原因で生じる二次性心筋症を除外する必要があります。多くの原因で心臓が拡張型心筋症のような形態になります。

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拡張型心筋症の診断

『左室拡大と左室の収縮機能低下』を認め、除外すべき二次性心筋症を除外できたら拡張型心筋症と診断されます。

拡張型心筋症の問題点

拡張型心筋症の問題点は、いろいろな合併症を引き起こす可能性があることです。後述するような心不全、不整脈(特に心室性)、突然死が発生する可能性があります。

それぞれの病態に対する対応方法があります。予後を改善するための方法を個別に選択していきます。

拡張型心筋症の症状

拡張型心筋症では自覚症状がなく進行していくことが多く、自覚症状が出始めたころには病状が進行しています。自覚できるようになる症状としては、以下のような症状が挙げられます。

拡張型心筋症の症状は、「うっ血による症状」と「ポンプ機能低下による症状」があります。主に以下のような症状があります。

息切れ拡張型心筋症では、心臓のポンプとしての機能が落ちたり、肺に水が溜まることで息切れをおこしやすくなります。
進行すると息切れは安静にしていても感じるようになります。
倦怠感血液が循環しないことで、疲れやすくなります。
浮腫ポンプ機能が落ちると水の循環が悪くなり、足や体がむくんだりします。
動悸不整脈により動悸を感じることがあります。
めまい・失神めまいや失神は脳への血流が落ちることが原因となることがあります。
拡張型心筋症では不整脈(特に心室性不整脈)を合併しやすく、重篤な不整脈の可能性が疑われるため精査が必要です。

症状の増悪や新しい症状が出現したときは、すぐに主治医に連絡しましょう。

早めに医療機関を受診する目安

以下のような症状が数分間異常持続していれば、すぐに119または医療機関に連絡しましょう。

  • 心臓の鼓動が非常に早いまたは不規則
  • 呼吸が苦しい
  • めまい・意識が遠い・失神した

拡張型心筋症の原因

拡張型心筋症の原因は、大きく分けて「遺伝性」と「非遺伝性」があります。

遺伝性の要因

家族性の拡張型心筋症について、いつくかの遺伝子変異が指摘されています。明らかな家族性があっても、変異が特定されていないものも多くあります。

また、非遺伝性の患者さんの中には遺伝子変異が潜んでいる可能性もあります。

ある遺伝子変異に外的な要因が加わることで心筋症を発生することもあるようです。

非遺伝性

遺伝性がはっきりしない拡張型心筋症は「非遺伝性」に属することになります。

感染や自己免疫、解明されいない遺伝子変異など、特定されないことの原因について解析が行われていますが、一定の見解には至っていません。

拡張型心筋症の予後

拡張型心筋症の予後は決して楽観視できるものはありません。心不全や致死的な不整脈の合併のリスクもあります。

ただし、最近では薬物療法の進歩、心臓再同期療法や植え込み型補助人工心臓により予後は以前よりも改善しています。

状況によっては心臓移植も検討されます。

拡張型心筋症の合併症

心不全心臓のポンプ機能が落ちることで急に苦しくなる急性心不全や慢性的に症状が続く慢性心不全の状態になることがあります。
薬物療法や非薬物療法を組み合わせた治療が行われます。
拡張型心筋症の経過で最も重要な合併症です。
心房細動拡張型心筋症では、心房細動を合併することがあります。心不全のコントロールが悪くなったり、塞栓症の原因となります。
突然死・心室性不整脈拡張型心筋症では、ダメージをうけた心室で不整脈が起きやすくなります。心室性不整脈は血圧が下がったり、命に関わる状況になることがあります。
心室性不整脈のリスクがある場合は、植込み型除細動器の植え込みが考慮されます。薬物療法を併用したり、アブレーション治療が選択されることもあります。
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