特徴
アミオダロンは複数の作用機序を有する抗不整脈薬です。特に生命を脅かす不整脈(心室細動や心室頻拍)に対して用いられることが多い薬です。
心房細動にも使用されます。特に肥大型心筋症や心不全のある心房細動に対して適応があります。
アミオダロンは全身に分布してから心臓に効いてきます。そのため、効果がでるまでに2〜3週間かかることがあります。
アミオダロンには複数の注意すべき副作用があります。定期的なフォローが必要になります。
不整脈を抑える作用
内服のアミオダロンの効果は、カリウムチャネル、カルシウムチャネルの阻害とβ受容体阻害により不整脈を抑制する効果があります。
- カリウムチャネル阻害:活動電位の持続が長くなり、不応期も延長することでリエントリー性不整脈を抑える
- β受容体阻害:アドレナリンによる心臓の電気興奮を抑えることで不整脈を起こしにくくします
- そのほかの作用:カルシウムチャネル阻害、ナトリウムチャネル阻害
アミオダロンは代謝される過程でデスエチルアミオダロン(DEA)が産生されます。DEAはアミオダロンと同様に不整脈に対する効果を有します。
アミオダロンはゆっくり効いてくる
アミオダロンは脂質に溶けやすい薬です。まずは全身に分布され、その後に血液中に出てきます。そのため、心臓に対する効果が出るまでに2〜3週間が必要な場合もあります。
また、中止しても全身に分布されたアミオダロンはゆっくりと染み出してきます。しばらくその効果が続くことになります。そのため、副作用が改善するのに時間がかかります。
副作用
アミオダロンは非常に有効な抗不整脈薬ですが、いくつかの注意すべき副作用があります。副作用の強さによっては、内服の中止を余儀なくされます。ほとんどの副作用は可逆性で、中止により改善します。
- 徐脈
アミオダロンは複数のイオンチャネルを阻害する効果とβ受容体を阻害する効果により不整脈を抑えます。これらの効果が強くなると、徐脈傾向になります。
また、QT時間の延長により多形性心室頻拍のリスクもあります。定期的な心電図で評価をします。
- 肝障害
特に症状なく肝臓の酵素(AST、ALTなど)が上昇することがあります。軽度の上昇では処方は継続されます。肝硬変になることはまれです。
- 甲状腺機能障害
甲状腺機能亢進症または甲状腺機能低下症が発生する可能性があります。甲状腺機能検査を定期的に行います。
軽度の甲状腺機能低下であれば経過を見ますが、ホルモン補充療法を行うこともあります。
- 肺疾患
アミオダロンによる肺障害が起こることがあります。間質性肺炎という肺炎が発生すると息が苦しくなります。また、ARDSという急性の肺障害のリスクもあります。
アミオダロンの内服量が多い、高齢者、元々肺疾患がある、などの場合は注意が必要です。発症した場合は、アミオダロンを中止し、入院の上ステロイド治療などが行われます。
発症すると治療には時間がかかります。内服量が少ない患者さんでは発症リスクは低いようです。
- 皮膚の変化
光感受性が高まり、日焼けしやすくなることがあります。日焼け止めによって抑えられる可能性があります。
また、太陽にさらされやすい部位(顔、首、腕など)で皮膚が青みがかったように変色するすることがあります。アミオダロンの中止により、ゆっくり改善します。
- 目の変化
角膜の色素沈着が発生します。多くの方で発生しますが、日常生活で問題となることは少ないでしょう。
まれに視神経炎などの報告があります。視力のぼやけまたは視力の変化が発生した場合は主治医に相談しましょう。眼科にてチェックをしてもらう必要があります。
- 末梢神経障害
手や足に灼熱感、しびれ、うずき、または痛みを感じる場合は、末梢神経障害の可能性があります。薬以外の原因がないか評価が必要です。
アミオダロンを内服する患者さんには内服する理由があります。副作用のリスクとアミオダロンの効果とバランスをとる必要があります。
注意事項
注意が必要な副作用が複数あるアミオダロンでは定期的なフォローが必要です。
心電図 | 定期的受診ごとに施行。少なくとも12ヶ月ごと。 |
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肝機能検査 | 少なくとも 6ヶ月ごと。または肝障害を疑う症状がある場合。 |
甲状腺機能検査 | 投与前および 3〜6ヶ月ごと。または甲状腺疾患を疑う症状がある場合。 特に最初の1年間は約3ヶ月ごと。 |
胸部エックス線 | 投与前および 12ヶ月ごと。または息切れや咳などの症状がある場合。 |
肺機能検査 | 息切れや咳などの症状がある場合。 |
皮膚のチェック | 6〜12ヶ月ごと。 |
神経症状のチェック | 定期的受診ごとに聞き取り。 |
眼科受診 | 見え方に変化がある場合。眼科でのチェックを依頼。 |
併用薬のチェック | アミオダロンには多くの薬物相互作用がある。飲み合せの確認を。 |
追加の注意事項
- アミオダロンは代謝の様式から、効果が出てくるのに時間がかかります。2〜3週間継続して内服することが必要です。
- グレープフルーツは相互作用にて、アミオダロンの効果が強くなる可能性があります。