新型コロナウイルス感染症の診療(成人の軽症)

このページは「新型コロナウイルス感染症 COVID-19 診療の手引き 第 10.1版」を参考に成人が新型コロナウイルスに感染した際の対応について作成しています。

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新型コロナウイルス感染症にかかったら

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はSARS-CoV-2というウイルスによる急性呼吸器感染症です。

このウイルスはまず鼻咽頭などの上気道に感染すると考えられ、症状なく経過することもあります。咽頭痛が初発症状のことが多く、鼻水や鼻詰まりに加えて、倦怠感や発熱、筋肉痛が症状として出現することが多いでしょう。

この感染症が始まった頃と比較し、嗅覚や味覚の異常が発生する頻度は減っています。

軽症であれば1週間以内に症状が改善することが多いですが、何らかの症状が2ヶ月以上持続する場合もあります。

自宅療養のポイント

多くの方は特に医療を必要とせず、自然に回復していきます。まれに肺炎が生じたりして、重症化する可能性があります。以下に気をつけながら急性期を乗り切りましょう。

症状の観察と記録

  • 毎日、体温を測定し、症状(咳、息切れ、倦怠感など)に変化がないかを記録しましょう。
  • 重症化のサイン(高熱の持続、呼吸困難、意識混濁など)が生じた場合は、すぐに医療機関や保健所に連絡し救急要請をしましょう。

適切な休養と水分・栄養補給

  • とにかくしっかりと安静にし、十分な睡眠をとることで免疫にエネルギーを集中させましょう
  • 水分をしっかり摂取して脱水を防ぎましょう。脱水が高度になると倦怠感や意識の混濁に陥ります。
  • 栄養バランスの取れた食事をとりましょう。食欲がない場合はなんでもよいので、消化に良さそうなもの(お粥、スープ、ゼリーなど)をチョイスしましょう。

感染拡大を防ぐ

  • 同居している家族がいる場合、可能であれば部屋を分けましょう
  • 共有するトイレや洗面所を使用したら、触った部分を消毒しましょう
  • 家の中でもマスクを着用し、同居の家族を含めて手洗いを徹底しましょう
  • 部屋は定期的に換気を行いましょう

発症から5日間、かつ症状の軽快から1日以上経過するまでは人との接触はできるだけ避けましょう。

重症化が疑われるサインは?

自宅療養中に病状が進行し、重症化しないか心配なかたもいるでしょう。以下に示すような症状がなければ問題ないでしょう。しかし、一つでもあてはまる場合は医療機関や保健所に連絡し、相談しましょう。

呼吸に関する症状

  • 息が苦しいやいつもより呼吸が速い
  • 測定できればパルスオキシメーターにて測定し、酸素飽和度(SpO2)が92%未満である

意識や神経症状

  • 意識がはっきりしなくて、会話が成立しない
  • 強い眠気があり、または目が覚めない
  • 顔色が青白い、唇が紫色

胸の症状

  • 胸が痛い、圧迫感がある
  • 動悸がしたり、心拍数が非常に速い

発熱や倦怠感

  • 39°C以上の高熱が数日続いており、解熱剤が効かない
  • 体がだるくて動けない

全身の症状

  • 脱水症状:尿が何時間も出ていない、口の中が乾燥している
  • 嘔吐や下痢が続き、体力が著しく低下している

重症化するリスク因子

重症化のリスクが高い人は、以下のように示されています。

  • 高齢である
  • 男性の方がリスク高い
  • 基礎疾患があり、コントロール不良
COVID-19重症化に関連する基礎疾患

米国のCDCが発表したCOVID-19重症化に関連する基礎疾患のうちエビデンスレベルが高いものは以下のようになります。

悪性腫瘍悪性腫瘍(血液腫瘍)
代謝疾患1型および2型糖尿病
肥満(BMI ≧ 30)
心血管疾患脳血管疾患
心不全
虚血性心疾患
心筋症
呼吸器疾患間質性肺疾患
肺塞栓症
肺高血圧
気管支喘息
気管支拡張症
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
結核
嚢胞性線維症
肝疾患肝硬変
非アルコール性脂肪肝
アルコール性肝障害
自己免疫性肝炎
腎疾患慢性腎臓病(透析患者)
精神神経疾患気分障害
統合失調症
認知症
運動不足運動不足
妊娠妊娠・産褥
喫煙喫煙(現在および過去)
免疫不全HIV 感染症
臓器移植・幹細胞移植
ステロイド等の免疫抑制薬の投与
原発性免疫不全症候群

COVID-19の外来診療マネジメント

新型コロナウイルス感染症の治療を判断する上で重症度の判定が行われます。重要度は主に呼吸器症状で判定されます。SpO2(酸素飽和度)の値が用いられます。

医療従事者が評価する重症度分類の基準

重症度酸素飽和度臨床症状
軽症SpO2 ≥ 96%呼吸器症状なし または 咳のみで呼吸困難なし
いずれの場合であっても肺炎所見を認めない
中等度 I
 呼吸不全なし
93% < SpO2 <96%呼吸困難、肺炎所見
中等度 II
 呼吸不全なし
SpO2 ≤ 93%酸素投与が必要
重症ICUに入室している または 人工呼吸器が必要な状態

中等度以上で入院加療が考慮されます。また、軽症に分類されていても高齢者では全身状態を評価して入院の適応が判断されます。

外来での抗ウイルス薬使用の目安

外来診療における抗ウイルス薬の使用の目安を示します。

軽症から中等症で入院加療で、病状の進行が予期されない場合は対症療法になります。

対症療法:発熱や痛みに対して解熱鎮痛薬、咳に対して鎮咳薬、下痢に対して整腸剤などを用いて症状の緩和を目指す治療。

発症から7日間以内で重症化リスクがある場合は、入院および重症化予防のため「ニルマトレルビル/リトナビル」の使用が検討されます。ニルマトレルビル/リトナビルが使用できない場合に、「レムデシビル」や「モラヌピラビル」の使用が検討されます。

臨床症状(高熱・強い咳症状・強い咽頭痛など)が強い場合に、「エンシトレルビル」を考慮します。

ニルマトレルビル/リトナビル

商品名:パキロビッドパック

投与方法:〔成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児〕ニルマトレルビルとして,1回 300 mgおよびリトナビルとして1回 100mgを同時に1日2回,5日間経口投与する.

中等度の腎機能障害患者[30 ≦ eGFR< 60]には,ニルマトレルビルとして1回 150mg およびリトナビルとして1回100mgを同時に1日 2 回,5日間の経口投与に減量する

禁忌:①本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者、②特定の薬剤を投与中の患者(最新の添付文書を参照)。③腎機能または肝機能障害のある患者で,コルヒチンを投与中の患者

レムデシビル

商品名:ベクルリー点滴静注用100mg

投与方法:〔成人および体重40kg以上の小児〕レムデシビルとして,投与初日に 200mgを,投与2日目以降は 100mgを1日1回点滴静注する.〔体重3.5kg以上40kg未満の小児〕レムデシビルとして,投与初日に5mg/kgを,投与2日目以降は2.5mg/kgを1日1回点滴静注する.

感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始し,3日目まで投与する.肺炎や症状に応じて最長10日目まで

禁忌:本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

モラヌピラビル

商品名:ラゲブリオカプセル 200mg

投与方法:〔18歳以上の患者〕モルヌピラビルとして1回 800mgを1日2回,5日間経口投与する.

禁忌:①本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者、②妊婦または妊娠している可能性のある女性

エンシトレルビル

商品名:ゾコーバ錠 125mg

投与方法:〔12歳以上の小児および成人〕エンシトレルビルとして,1日目は 375mg,2日目〜5日目は 125mgを1日1回経口投与する.

禁忌:①本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者、②特定の薬剤を投与中の患者(最新の添付文書を参照)、③腎機能または肝機能障害のある患者で,コルヒチンを投与中の患者、④妊娠または妊娠している可能性のある女性

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