肥満に対する薬物治療

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肥満に対するクスリ

肥満に対する薬物治療は、「GLP-1受容体作動薬」「脂肪吸収抑制薬」「食欲抑制薬」があります。

どの薬も治療を開始するまえには、十分な生活習慣の改善を行う必要があります。食事療法や運動療法を行なっても減量が難しい場合に薬物治療が行われます。

肥満に対する GLP-1受容体作動薬

GLP-1受容体作動薬はもともと糖尿病の薬でインスリン分泌をサポートする薬剤です。この薬の影響として、食欲が低下したり、胃の排出を遅らせることで体重減少に働くことがわかっています。

肥満を合併した糖尿病患者さんには処方しやすい薬ですが、「肥満」のみに対して処方できるGLP-1受容体作動薬は注射薬の「ウゴービ(セマグルチド)」だけです。下記のように厳格に適応基準が決められています。

また、肥満の治療としてGLP-1受容体作動薬を処方できる医療機関(日本肥満学会 認定肥満症専門病院)は限られています。

GLP-1受容体作動薬の肥満に対する適応

高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る

  • BMIが 27 kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
  • BMIが 35 kg/m2以上
肥満に関連する健康障害
  • 耐糖能障害 (2型糖尿病・耐糖能異常など)
  • 脂質異常症
  • 高血圧
  • 高尿酸血症・痛風
  • 冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)
  • 脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患
  • 月経異常・女性不妊
  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
  • 運動器疾患 :変形性関節症(膝・股関節)・変形性脊椎症、手指の変形性関節症
  • 肥満関連腎臓病

2024年11月現在

GLP-1受容体作動薬は「肥満」に対する減量の薬として有名になりました。特に美容や自由診療で使用されるケースが問題となっています。

脂肪吸収抑制薬

腸管での脂肪の吸収を抑えることで摂取カロリーを減らす薬です。

日本ではオルリスタット(アライ)が使用されます。膵リパーゼ酵素を阻害することで腸からの脂肪吸収を抑え、食事中の脂肪が体内に吸収されるのを防ぎます。食べた脂肪のうち25%が便中に排泄されます。(アライのホームページより)

アライ

対象:生活習慣改善の取り組みを行っているが、腹囲が太い方

期待される効果腹部が太め(男性85cm以上、女性90cm以上)な方の内臓脂肪および腹囲の減少(生活習慣改善の取り組みを行っている場合に限る)

副作用:便に脂肪が多く含まれるため副作用としては下痢や脂肪便が見られます。

「アライ」を服用すると肛門から油を多く含む便が漏れてしまうことが多いようです。油を含む食事を減らすことで便の性状は落ち着くようです。食事内容を見返すキッカケになりそうです。

「アライ」は医療機関でなく薬剤師が薬局・薬店のみで購入できます。

食欲抑制薬

以前より中枢神経系に作用して食欲を抑える薬があります。摂取カロリーを減少させて、減量することが期待されます。

マジンドール(サノレックス)という食欲抑制剤があります。副作用の観点からできるだけ短い期間の服用に限られます。

マジンドール

効能:あらかじめ適用した食事療法及び運動療法の効果が不十分な高度肥満症(肥満度が+70%以上又はBMIが35以上)における食事療法及び運動療法の補助

投与期間:できるだけ短期間で。限度は3ヶ月間

副作用:肺高血圧症のリスク

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