さがりにくい血圧は「二次性高血圧」かもしれません

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二次性高血圧とは

高血圧の多くは原因ははっきりしない「本態性高血圧」です。生活習慣の改善や降圧剤で治療が行われます。

一方で特定の基礎疾患や状態が原因で高血圧となるものを「二次性高血圧」といいます。高血圧患者の約10%が二次性高血圧と推定されます。

若くして高血圧が指摘されたり、治療に抵抗性の高血圧であったり、急に高血圧になったような患者さんは二次性高血圧の可能性があります。

二次性高血圧の原因

二次性高血圧の原因はいろいろとありますが、比較的頻度が高いものは以下の通りです。

  • 腎性高血圧:腎臓が原因で血圧があがることがあります(腎血管性高血圧、慢性腎疾患)
  • 内分泌疾患:血圧があがるようなホルモン分泌が異常になり血圧があがることがあります。
  • 睡眠時無呼吸症候群:睡眠障害により血圧が上がることがあります。
  • 薬剤性高血圧:ステロイド薬、鎮痛薬などで血圧が上がることがあります。

腎性高血圧(腎臓に起因した高血圧)

腎臓が原因で高血圧になることがあります。

  • 腎実質性高血圧:慢性腎疾患によるもの
  • 腎血管性高血圧:腎動脈の狭窄によるもの

腎実質性高血圧

原因

慢性腎臓病により腎機能が低下することが原因で高血圧になった状態。

ナトリウム・水分の排泄が障害されることで血圧が高くなります。また、レニン分泌異常からアンジオテンシンIIやアルドステロンが増加することでも血圧が上がります。

主な原因

  • 慢性糸球体腎炎
  • 多のう胞性腎臓病
  • 糖尿病性腎症 など
検査
  • クレアチニンなどで腎機能の検査
  • 腹部超音波やCTに腎臓の形態を評価
対応

腎機能の障害がある場合は、腎機能低下の原因を精査し治療介入が必要になります。腎臓の専門にて評価してもらう必要があります。

腎血管性高血圧

原因

腎動脈の狭窄によって生じた高血圧。

腎臓を栄養する動脈(腎動脈)が狭窄などで血流が減少すると、腎臓は低血圧になったと勘違いしてレニンというホルモンを出します。

レニンが過剰になり、レニン-アンジオテンシン系が活性化すると、高血圧になります。

検査
  • 腹部エコー検査:腎動脈の狭窄、腎臓の萎縮など
  • 血液検査:血漿レニン活性の上昇(正常値のこともある)
  • その他の画像検査:腎シンチグラフィー、腎動脈造影、MRA、CTなど
治療・対応

腎血管性高血圧の治療は、降圧薬による薬物治療血流を改善させる治療があります。血流を改善させる治療は専門的な治療なので専門機関で行われます。

降圧薬による治療

ACE阻害薬やARBが予後を改善させる効果が期待されます。一方でこれらの薬剤は急に腎臓の機能を低下させることがあるため、少量から開始し血液検査で腎機能や血清カリウム値を測定し調整します。

血流を改善させる治療

腎動脈の血流を回復させる治療としては、カテーテル治療が主に行われます。狭窄があるところをバルーンで拡張したり、ステントと呼ばれる金属の筒を留置することがあります。

カテーテル治療が難しい場合は手術治療が行われるとともありますが、実際に行われることは多くはありません。

内分泌性高血圧

  • 原発性アルドステロン症:副腎が過剰にアルドステロンを分泌することで血圧が上昇
  • クッシング症候群:副腎皮質からの過剰なコルチゾール分泌により血圧が上昇
  • 褐色細胞腫:副腎髄質から過剰なカテコラミン(アドレナリンなど)が分泌され血圧が上昇
  • 甲状腺機能亢進症(バセドウ病):甲状腺ホルモンの過剰分泌が心拍数を増加させ、血圧が上昇

原発性アルドステロン症

原因

副腎から過剰にアルドステロンが分泌され、ナトリウムの再吸収が促進されて高血圧が生じます。

検査
  • 血液検査:血清カリウムの低下(正常のことも多い)、血清カルシウムの低下、レニン活性低下、アルドステロン濃度上昇

アルドステロン濃度、レニン活性測定によるスクリーニング

原発性アルドステロン症を疑った場合に、血液検査でアルドステロン濃度(pg/ml)とレニン活性(ng/ml/hr)を測定します。
降圧剤未投与または2週間休薬後の測定が望ましい。影響の少ない降圧剤はCa拮抗薬、α遮断薬などです。

アルドステロン濃度/レニン活性の比 > 200で原発性アルドステロン症の可能性があります。

アルドステロン濃度、レニン活性のスクリーニングにて比が200を超えた場合は、確認の検査に進みます。この時点で専門施設へ紹介となることが多いでしょう。

  • カプトプリル負荷
  • フロセミド立位負荷試験
  • 生理食塩水負荷試験

確認の検査で陽性になった場合は、造影CT検査にて副腎の腫瘍の有無を確認します。腫瘍があってもアルドステロンを過剰分泌してない可能性もあります。

手術による治療を選択する場合は、カテーテルを使った検査が必要になります。専門的な医療機関で評価することになります。

対応

原発性アルドステロン症の治療は、外科的治療降圧剤による治療があります。血流を改善させる治療は専門的な治療なので専門機関で行われます。

外科的治療

アルドステロンを過剰に分泌する副腎の腫瘍が左右のどちらかに認めた場合は、外科的な治療(腹腔鏡下副腎摘出術)が選択されます。治療後に血圧や電解質の正常化が見込めます。

降圧薬による治療

外科的治療の適応がない場合は、降圧薬による治療が行われます。原因がアルドステロンの過剰なので、スピロノラクトンエプレレノンなどのミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)が特に有効です。

原発性アルドステロン症を疑う

以下の特徴がある場合は原発性アルドステロンを疑います

  • 低カリウム血症を伴う高血圧
  • 若い患者さんの高血圧
  • 血圧が非常に高い
  • 降圧剤の治療に抵抗性
  • 偶発的に副腎に腫瘤がみつかった
  • 40歳以下で発症した脳血管疾患をともなう高血圧

クッシング症候群

原因

副腎からの過剰なコルチゾール分泌により高血圧が引き起こされます。

脳の下垂体などから分泌されるホルモン(ACTH;コルチゾール分泌を促す)が過剰であったり、副腎の問題でコルチゾール分泌が過剰であったりする。

コルチゾール過剰で、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症などや特徴的な身体的な変化が生じます。

検査
  • 身体的変化の確認:特徴的な肥満、満月様顔貌、薄い皮膚、にきびなど
  • 血液検査:血液中コルチゾール上昇
  • 各種ホルモン検査:ACTH測定、デキサメサゾン抑制試験など
  • 画像検査:CTやMRI
対応

クッシング症候群が疑われた時点で専門機関に紹介されます。

クッシング症候群と診断された場合に、まず検討される治療はコルチゾールもしくはACTHを過剰に分泌する腫瘍の切除になります。

褐色細胞腫

原因

副腎髄質から過剰なカテコラミン(アドレナリンなど)が分泌され、血管が収縮して高血圧を引き起こします。

随伴する症状として、頭痛、動悸、発汗があり、発作的に血圧が上昇します。

検査
  • 問診:随伴症状の有無(頭痛、動悸、発汗、発作的な高血圧)
  • 血液検査:血漿カテコラミンレベルの増加(正常範囲の上限の3倍以上)、メタネフィリン(カテコラミンの代謝物)の増加
  • 尿検査:尿中のカテコラミンやメタネフィリンの濃度上昇(感度、特異度が高い)
  • CTやMRI:副腎腫瘍の確認
  • MIBGシンチグラフィー、FDG-PET検査
対応

褐色細胞腫の診断がついた場合は、遺伝性の要素やほかの内分泌病の合併について評価されます。

外科的な治療が主に行われます。手術ができない場合は薬物療法が行われます。いずれにしても専門的な評価・治療が必要になります。

甲状腺機能亢進症

原因

甲状腺ホルモンの過剰分泌が心拍数を増加させ、血圧上昇を引き起こします。

検査
  • 甲状腺機能検査:血液検査で甲状腺の活動性を評価します
  • そのほかの血液検査:甲状腺機能が亢進する病気の鑑別を行います
  • 甲状腺エコー検査:甲状腺の状態を評価します
対応

甲状腺機能の異常は専門的な評価・治療が必要になります。

そのほかの原因

腎臓や内分泌疾患以外に二次性高血圧となる病気もあります。

血管性高血圧

大動脈炎などで腎動脈への血流が落ちて高血圧となる。診断までに時間がかかることが多い。7

中枢性の病気に伴う高血圧

脳腫瘍や脳炎などで脳圧が上がると高血圧になることがある。

薬剤性高血圧

高血圧になる可能性のある薬剤は以下の通り

  • 非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)
  • 一部の漢方薬(甘草が含まれる)
  • グルココルチコイド
  • シクロスポリンやタクロリムス
  • 分子標的薬 など
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