骨粗しょう症とは
WHOの定義では「骨粗しょう症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である」となっています。
つまり、骨密度が低くなり、骨が脆くなって折れやすく(骨折しやすく)なっている疾患です。
骨粗鬆症は本邦において1280万人が罹患していると推定されており、その約8割が女性であるとされています1。
骨粗しょう症の症状は「骨折」
骨粗しょう症は骨が脆くなる病気であり、最大の問題は「骨折」しやすいことです。骨粗しょう症で起こりやすい骨折は、「大腿骨近位部骨折」と「椎体骨折」です。
- 大腿骨近位部骨折
大腿骨は太腿にあり、股関節(足の付け根)から膝までの骨です。
骨粗しょう症になると転倒などを契機に大腿骨の近位部が骨折することがあります。
大腿骨近位部骨折なると、強い痛みがあり足を動かすことができなくなります。
X線撮影やCT検査などで診断をつけます。整形外科に相談し、早期に手術になることもあります。
- 椎体骨折
椎体とはいわゆる背骨の骨であり、骨粗しょう症になると椎体が骨折することがあります。
尻もちをついたり、重いものを持ち上げただけで骨折することもあります。圧迫骨折とも呼ばれます。
骨折した椎体が多くなると背中が丸くなり、生活に支障を来します。身長が低くなります。
安静にして骨が安定するのを待ちますが、手術が行われることもあります。
最近では、潰れた骨の中にセメントのようなものを注入して骨を補強する治療も行われています。
「骨折」は介護が必要になる原因の第3位
骨折しても、手術して骨がくっついたら日常生活に戻れると考えている方は多いかもしれません。しかし、骨粗しょう症に合併した骨折では、骨折後に生活に支障をきたし、骨折前と同じようには動けなくなる方も少なくはありません。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2022年)によると、介護が必要になった(要介護と認定された)方の原因の3位(13.9%)が骨折や転倒が契機になっています。
骨折を契機に動きが悪くなり、だれかの助けが必要になります。
骨密度が低下する原因は?
骨は吸収と形成を繰り返している
骨は、コラーゲンというたんぱく質で作られた構造に(カルシウムとリンで作られた)ハイドロキシアパタイトなどがくっつくことで作られています。
実は骨は壊れたり作られたりして、代謝されながら維持されています。骨を健全な状態で保つこの機構を、骨代謝(骨リモデリング)といいます。
- 破骨細胞が骨の溶かして吸収します(骨吸収)
- 溶けたところに骨芽細胞が基質となるたんぱく質を作り、数日後にカルシウムやリンが沈着して骨が新しくなります(骨形成)
骨強度が落ちる要因
骨強度 = 骨密度 + 骨質
骨の強さ(骨強度)は、骨密度と骨質(微細構造、骨代謝回転、微小骨折、石灰化)で決まります。その中でも骨密度が重要な役割を担っています。
骨強度は骨密度と骨質からなりますが、骨強度が低下する理由はさまざまです。骨粗しょう症は、酸化ストレスや骨代謝の変化、ビタミンDやビタミンK不足などによって生じます。
原因① 年齢
加齢による骨強度が低下することがあります。その理由としては、消化管による吸収や代謝の影響でカルシムが減少したり、運動量の減少や筋肉の低下などが挙げられます。その結果、骨吸収が骨形成よりも優勢になり、骨強度が落ちていきます。
原因② 閉経
女性にとって重要なホルモンであるエストロゲンは、骨代謝に影響を与えます。エストロゲンは、破骨細胞の働きを抑え、骨代謝のバランスをとっています。
閉経をするとエストロゲンの分泌が低下します。抑えられていた破骨細胞が活発になることで、骨吸収が骨形成より優勢になり、骨強度が低下することになります。
原因③ 生活習慣
骨粗鬆症に関わりのある生活習慣はとしては、食事の影響(カルシウムやビタミンD、ビタミンKなどの摂取不足)、日光に当たらない、運動不足、喫煙、アルコールの過剰摂取などが挙げられます。
- 日光:紫外線に触れることでビタミンDが活性化され骨形成に役立ちます。
- 運動:運動は骨に刺激を与えて骨強度を上げます。また筋力やバランスをよくすることは転倒防止につながります。
- 喫煙:喫煙することでカルシウムの吸収低下と尿への排泄が促進されます。またエストロゲンを抑える作用もよくない影響になります。
- アルコール:過度なアルコールもカルシウムの吸収低下と尿への排泄が促進されます。
また、極端な食事制限によるダイエットは栄養バランスが低下し、骨粗しょう症になりやすくなります。
骨粗しょう症の検査と診断
骨密度の測定
骨粗しょう症の検査では、骨の強さを測る指標として骨密度を測定します。骨密度とは骨を強くする成分(カルシウムやリンなど)がどれくらい含まれているかを推定する値です。
骨密度を測定する方法は、超音波を用い知る方法とエックス線を用いる方法があります。
超音波を用いた骨密度測定
定量的超音波測定法(QUS)
定量的超音波測定法は、骨粗しょう症のスクリーニング検査として行われます。
超音波を使用して、骨密度を測定します。
通常は踵の骨で測定されます。簡便であり、骨粗しょう症検診などで使用されます。
ただし、この検査だけでは骨粗しょう症の診断はできません。
エックス線を用いた骨密度測定
二重エネルギーエックス線吸収法(DXA)
2種類のエックス線を使用して骨量を測定します。全身の骨を測定することが可能です。
骨粗しょう症の診断には、腰の椎体(腰椎)と太ももの骨(大腿骨)の近位部の測定がよく用いられます。
エックス線を使用しますが、被ばく量は多くはありません。
DXAを設置している病院は多くはありません。
MD法
両手をエックス線撮影します。手のひらにある骨(第二中手骨)をアルミニウム濃度と比較して骨密度を測定します。
検査で骨粗しょう症の診断を行うことはできます。
ただし、骨粗しょう症の治療効果を判定することは難しいようです。
骨折を未然に防ぐために、骨粗しょう症を早期に発見するための骨粗鬆症検診が行われています。
対象:40〜70歳で5歳刻みで実施されている。(自治体によっては頻度がより多い場合もある)
案内があればぜひ検診を受けましょう。
骨粗しょう症の診断
骨粗しょう症は他の疾患により骨密度が低下する続発性骨粗鬆症があります。続発性ではない骨粗しょう症は原発性骨粗鬆症と言います。
- 脆弱性骨折あり
- 椎体骨折または大腿骨近位部骨折あり
- その他の脆弱性骨折あり、骨密度がYAMの80%未満
- 脆弱性骨折なし
- 骨密度がYAMの70%以下または-2.5SD以下
脆弱性骨折(わずかな外力で発生した骨折)がある場合とない場合に分かれます。椎体骨折や大腿骨近位部骨折があれば骨粗しょう症と診断されます。
また、椎体や大腿骨近位部以外の脆弱性骨折(肋骨、骨盤、上腕骨近位部、橈骨遠位端、下腿骨)が見られ、骨密度がYAMの80%未満の場合も診断されます。
脆弱性骨折がない場合は、骨密度がYAMの70%以下か-2.5SD以下の場合に診断される。
診断のための骨密度測定部位
診断のためには基本的には腰椎または大腿骨近位部の骨密度が使用される。測定が困難な場合は、橈骨や第二中手骨が使用されるが、その際は%表示のみ行われる。
YAMとは
YAMとはyound adult meanの略で、「若年成人の平均値」を意味します。YAMが80%未満(若年成人の平均と比較して80%未満に骨密度が低下)で要注意、70%以下になると骨折がなくても骨粗しょう症と診断されます。
SDとは
SDとはstandard deviationの略で、どの程度平均値から外れているかを示す指標です。-2.5SDとは通常のばらつきの範囲から逸脱して骨密度が低いことを意味します。
- 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版 ↩︎