慢性腎臓病(CKD)について:診断と重症度評価

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慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)とは

慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)は、腎臓の機能が徐々に低下していく病態を表す総称です。いろいろな原因でCKDが発生し、進行していきます。

CKDの定義
  1. 尿異常(蛋白尿など)や画像検査などによる腎臓の障害がある
  2. 糸球体濾過量(GFR)が60 mL/min/1.73m2 未満

1、2のいずれか、または両方が3ヶ月以上持続している

CKDは上記のように定義されます。つまり、蛋白尿とGFRの計算にてCKDの診断をします。

CKDが進行していくことで起こりうる最悪のシナリオは、腎不全となり自分で老廃物を尿として排出することができなくなることです。腎臓で排出せれるべき老廃物(尿毒素)が体に溜まると命の危険が発生します。

進行した腎不全になると人工透析が必要になります。ちなみに人工透析に至るCKDの原因の1位は糖尿病性腎症です。

慢性腎臓病(CKD)の原因は?

慢性的に腎臓に負担をかけ障害をする病気として、生活習慣病である高血圧、糖尿病や脂質異常症などが挙げられます。また、肥満や塩分、アルコール、喫煙などもCKDのリスクを高めます。年齢も腎機能を低下させる要因の一つです。

CKDの主な原因

主な原因

  • 糖尿病
  • 高血圧
  • 糸球体腎炎
  • 間質性腎炎
  • 遺伝性腎臓病
  • 尿路閉塞
  • そのほか

リスクを高める生活習慣

  • 肥満
  • 塩分取りすぎ
  • アルコール取りすぎ
  • 痛み止めの常用
  • 喫煙
  • そのほか

CKDが意味するところ

CKDがあるということは、きちんと対応していかないといずれ末期腎不全状態となり人工透析が必要になる可能性があります。

さらに、生活習慣病として全身の臓器が障害されている証拠かもしれません。生活習慣病がある方は、CKDにならないように、CKDを重症化させないように注意する必要があります。

CKDを早期発見する

CKDは自覚症状が乏しいため、知らないうちに進行してしまうことがあります。気づいた時には人工透析直前という患者さんもいます。

早期発見で進行を遅らせることができます。

CKDの早期発見は尿蛋白と腎機能(eGFR)で判断します。

健康診断や生活習慣病の定期受診の際に定期的に尿検査や血液検査による腎機能の評価を受けましょう!以下の基準を満たす場合は、かかりつけにて評価をしてもらいましょう。

病院にかかる基準

尿蛋白陽性(1+)以上 または eGFR 60 mL/分/1.73m2未満

CKDの重症度を評価する

CKDのスクリーニング検査(尿蛋白、eGFR)で基準にひっかかった場合に、CKDの原因となる疾患を調べます。CKDは進行性の病気であり、検査の時点でのCKDの重症度を分類します。

CKDの重症度は、蛋白尿区分と腎機能(GFR区分)で判定します。その際に「糖尿病」と「それ以外」に分けて判定されます。

CGA分類

CKDの重症度を表記する際に、CGA分類が使用されます。

C原因CKDの原因を表記
GGFRGFR区分を表記
AACR*蛋白尿区分を表記

例)糖尿病でGFR区分は「G2」、蛋白尿区分が「A3」であれば、糖尿病G2A3と表記されます。

蛋白尿区分

蛋白尿がどの程度出ているかを分類します。ここで「糖尿病」か「それ以外」かで測定する項目が違います。「それ以外」の場合は、尿中の蛋白を測定します。一方、「糖尿病」の場合は、尿中のアルブミンの値を測定します。

測定方法としては、1日尿蛋白(またはアルブミン)定量と尿蛋白(またはアルブミン)/クレアチニン比があります。

尿蛋白(またはアルブミン)定量

1日の尿を蓄尿します。溜めた尿の蛋白(またはアルブミン)濃度を測定し、1日分の尿量を掛けるます。1日の間に尿中に排出された蛋白の量を計測することができます。外来での検査は難しいです。

尿蛋白(またはアルブミン)/クレアチニン比

1回の尿検査から1日の尿蛋白(またはアルブミン)の総量を推定する検査です。尿中の蛋白(またはアルブミン)濃度と尿中のクレアチニン濃度を測定します。1日の間に尿中に排出されるクレアチニンが1gと仮定します。尿蛋白(またはアルブミン)濃度を尿クレアチニン濃度の比をとります。

eGFR

eGFRは推算糸球体濾過量(estimated Glomerular Filtration Rate)の略語です。腎臓が老廃物を尿として排泄する力を推定する値です。慢性腎臓病の重症度を調べる際に使用されます。

eGFRは「年齢」「性別」「血清クレアチニン値」から算出されます。

血清クレアチニン値は筋肉量や食事、運動の影響を受けることがあります。そのような影響があると考えれる場合は、影響の受けにくい血清シスタチンCを用いた計算式を使用します。

血清シスタチンCを用いたeGFRの推算式

CKDの重症度分類

先述の通り、CKDの重症度はCGA分類で行います。重症度が高いと末期腎不全へ移行したり心血管が原因の死亡が増えるリスクが高まります。

蛋白尿区分とGFR区分から末期腎不全や心血管死亡のリスクが高いかどうかを表します。

蛋白尿区分は、糖尿病ではアルブミン尿、それ以外では蛋白尿で評価します。

腎臓を評価する検査

尿蛋白定量検査とGFR検査以外に以下のような検査が追加となることがあります。

血液検査

血液検査は測定する機器や医療機関で正常値が異なりますので、正常の目安は参考程度にごらんください。

クレアチニン(正常の目安:男性は1.1mg/dL以下、女性は0.8mg/dL以下)

クレアチニンは血液中の老廃物です。腎臓の働きが低下するとクレアチニン濃度が高くなります。クレアチニンはおもに筋肉で作られる物質なので、筋肉量の少ない女性や高齢者では、腎臓が悪くても異常値を示さないことがあります。

eGFRを計算する際に必要な項目です。

尿素窒素(BUN)(正常の目安:10〜20mg/dLぐらい)

やはり血液中の老廃物の一種ですが、食事の影響で変化しやすく、タンパク摂取が多いときは高めになります。クレアチニンと一緒に測定されることが多いです。

血清総タンパク(正常の目安:6.5〜8.0g/dL)、血清アルブミン(正常の目安:3.6〜5.0g/dL)

血液中のタンパクやアルブミンの量を調べます。尿にタンパク質がが出ていると、血液中のタンパク質が減ります。蛋白尿による影響を判断します。

電解質

腎臓の機能がっd低下した時に血液中の電解質のバランスが低下することがあります。ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンなどが評価されます。

尿酸値(正常の目安:7.0mg/dL未満)

腎機能が低下すると尿酸値は上昇しやすくなります。

尿検査

クレアチニンクリアランス(正常の目安:100〜130mL/分)

一定時間尿を溜めて、そのなかに血液中の老廃物であるクレアチニンがどのくらい排泄されているか調べる検査です。健康な人は100〜130mL/分で、病気の進行とともに低下します。

尿沈渣

尿沈渣検査は尿中の物質を沈殿させて、その構成要素を顕微鏡で評価する検査です。以下のような項目を確認するができます。

  • 細胞成分(赤血球、白血球、上皮細胞など)
  • 円柱
  • 細菌
  • その他
クレアチニンクリアランス(随時尿)

1回の血液検査からクレアチニンクリアランスを推定することができます。

画像検査

エコー検査

超音波による検査です。腎臓の大きさや形状などを評価します。

CT検査

CT検査では、腎臓の大きさや形状、結石の有無、腫瘍病変の確認、などの評価が行われます。

MRI検査

CTと同様の項目が評価されます。詳細な構造を確認することができます。

腎生検検査

体の外から専用の針を使用して腎臓の組織を採取します。腎臓組織を顕微鏡で確認します。腎臓疾患の原因や進行状況を確認するために行われます。

腎臓専門医へ紹介するタイミング

前述の検査はどこの医療機関でもできるわけではありません。また、腎臓の詳しい評価は腎臓の専門医で確認してもらうことになります。以下のような状況であれば専門医に紹介するように勧められています。

腎臓専門医へ紹介するタイミング
  1. 高度蛋白尿:尿蛋白/Cr比 0 .50 g/gCr以上, または 2+以上
  2. 尿蛋白と血尿がともに陽性(1+)以上
  3. eGFR 50 mL/ 分 /1 .73 m2 未満(40歳未満では 60 未満、腎機能の安定した70歳以上では 40 未満)

慢性腎臓病は透析へつながっている

慢性腎臓病(CKD)から末期腎不全となり透析が必要な患者さんは年々増えています。毎年3万人以上の患者さんで透析が導入されています。

透析で腎臓の代わりをする治療が始まると、ほとんどの方で血液透析が行われています。血液透析は週に3回、1回4時間、病院に束縛されることになります。

透析に至るCKDの原因は、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症が大半を占めています。腎硬化症は高血圧による腎障害を意味しており、糖尿病と高血圧で透析の原因の6割を占めています。

生活習慣を改善することで、CKDを予防し透析への進行を抑えることが期待できます。

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