心房頻拍・心房粗動とは
心房頻拍は、心房で発生した不整脈で不整脈の維持に房室結節が関与していないものを言います。
心房頻拍・心房粗動の症状
起こりうる症状は、動悸や息切れといった症状です。
- 動悸
脈が通常よりも速くなったり、遅くなったり、乱れたりすることで心臓の鼓動を感じてしまうのが動悸です。
脈拍が非常に速くなると、動悸を通り越して胸痛(胸の痛み)を感じる方もいます。
- 息切れ
心臓は非常に効率よく拍動しています。不整脈により効率が悪くなると、心臓は全身に拍出する血液量が減ります。
ポンプの機能が軽度低下すると、歩いたり、階段を上がったりする時に息切れや疲労感を自覚することもあります。
心不全に至る場合もあります。
一方で、全く症状がない場合もあります。
診断は心電図
心房の電気を示すP波が連続的に見られます。
心房はたくさん電気信号が発生していますが、全てが心室へ伝導するわけではありません。この心電図では、2回に1回の割合で房室結節を通過して心室へ伝導しています。3回に1回、4回に1回になると心室の脈拍が変化します。
心房頻拍・心房粗動の種類
心房頻拍は局所タイプの不整脈が心房から連発で発生しているか、リエントリータイプの不整脈が心房内で旋回している状態です。
連発の「局所タイプ」が心房で発生
心房のどこかから、電気信号が連続的に発生された状態です。
連発の「リエントリータイプ」が心房で発生
心房のどこかから、電気信号が連続的に発生された状態です。
心房粗動
「リエントリー型」の心房頻拍で最も多くみられるのは、心房粗動と呼ばれる不整脈です。
電気が旋回する回路は右房内で、下大静脈と三尖弁の間が回路に含まれるものを心房粗動と言います。
心電図:心房の電気信号は、ギザギザとしたノコギリの刃のような形になります(鋸歯状波)。一つの刃が心房の1周を示しています。
不整脈の特徴
心房頻拍・心房粗動には以下のような特徴があります。
- 局所型は発作性に出現し、断続的に出たり止まったりを繰り返すことが多いです。
- リエントリー型は持続し、自然に止まりにくいことが多いです。(局所型も持続する場合もあります)
- どちらのタイプも、心房細動と併発していることがよくあります。
心房頻拍・心房粗動の原因は?
心房頻拍が起きやすくなる要因
心房頻拍の起きやすさはいろいろな要素により影響を受けます。
- 精神的、身体的ストレスや疲労
- 薬の副作用
- 血中電解質異常(血液中のナトリウム、カリウム、マグネシウムやカルシウムなど)
- 飲酒
- 睡眠時無呼吸症候群
- 加齢
- 心臓手術後
- ホルモンの影響など
心房頻拍・心房粗動の治療は?
心房頻拍・心房粗動の治療は急性期の治療と慢性期の治療に分けて考えます。
急性期の治療
- 局所型の心房頻拍の場合は、心房の興奮を抑える抗不整脈薬にて出現頻度の低下を目指します。
- リエントリー型は、抗不整脈薬で停止させることが難しいことが多いです。
- 抗不整脈薬を用いても停止せずに心拍数が多い場合は、房室結節の伝導を抑える薬を用いて心拍数の調整を行います。
慢性期の治療
- 心房頻拍により何らかの問題(症状や心機能低下など)を有している場合は、根治的な治療を目指します。
- 非常に効果のある抗不整脈薬が見つかればその薬を継続しますが、アブレーション治療にて根治的に治療することも可能です。
不整脈の発生の引き金となる誘因を取り除こう!
- バランス良い食事
飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が少なく、果物、野菜、全粒穀物が豊富な食事を心がけましょう。発酵食品も良いかもしれません。
- 適度な運動と健康的な体重を維持
息が上らない程度の持続的な運動(有酸素運動)を可能であれば、30分間行うことを目標にしましょう。
肥満は多くの心臓病や生活習慣病のリスクを高めます。
- 血圧やコレステロールのコントロール
高血圧や高コレステロール値は、心臓病のリスクを上げます。心臓の負担を取るためにもライフスタイルの見直しに努めましょう。
- ストレスのコントロール
精神的および身体的ストレスは、不整脈を増やし心臓に悪い影響を与えます。不必要なストレスを避けるように心がけましょう。
瞑想やヨガなども効果があるでしょう。
- アルコールを制限
アルコールと不整脈は強く関係しています。不整脈を持っている方は、アルコールはできるだけ摂取しないほうが良いとされています。
- 禁煙
喫煙習慣も心臓への負担を増やし、不整脈に影響します。禁煙を強く勧めます。
近くの禁煙外来をしているクリニックに相談してもよいでしょう。
- 睡眠時無呼吸症候群の評価を
睡眠時無呼吸症候群は不整脈の原因となります。さらに不整脈以外にも、多くの病気の原因になります。
いびきや睡眠中の無呼吸が指摘されたことがあれば、一度は必ず検査を受けましょう。重症度に応じてCPAP治療などを行います。きちんと治療をしないと予後が悪いこともわかっています。